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第6話 悪女の護衛騎士

last update 최신 업데이트: 2025-04-23 23:39:46

 それなりにまともなドレスに着替え、私と彼は人払いを済ませた落ち着かない自室へと戻っていた。

彼は今私の向かい側のソファに座っている。

「……それにしても酷い部屋ですね。赤と紫で統一された部屋ほど人の神経をいら立たせるものは無いと思いますよ」

「ええ。私もそう思うわ……。とてもじゃないけど、こんな部屋受け入れられないわ。だけど本当に記憶を失う前の私はこの部屋を気に入っていたのかしら?」

「……」

すると、またしても彼は何か言いたげな目で私を見つめている。

「何? どうかしたの?」

「いえ、驚いているのです。本当に池に落ちる前と落ちた後の貴女は同一人物なのかと疑ってしまいます。少なくとも以前までのユリア様はこの部屋を満足して使っていたと思いますよ?」

「やっぱり貴方もそう思うのね。私も違和感を抱いてしょうがないのよ。さっき、衣装部屋で私に言ったわよね? この世に魔法が存在するのは常識だって。そのことがまず信じられないのよ」

「魔法がある世界が……ですか?」

「ええ、そうよ。大体、魔法が存在するなんて……まるで物語の中の話だわ」

でも……もし魔法がある世界なら私も魔法が使えるに違いない。どんな魔法が使えるか分からないけど……。

思わず笑みを浮かべた時。

「言っておきますが……ユリアお嬢様」

「何?」

「水を差すようですが、ユリアお嬢様は魔法はこれっぽっちも使うことが出来ませんよ?」

「え!? 嘘! これっぽっちも……?」

「ええ、これっぽっちもです」

「そ、そんな……箒にまたがって空を飛んだり、魔法の杖を振って食べ物を出したりすることも出来ないのね……」

思わずため息をつく。

「何ですか……? 箒にまたがって空を飛ぶとか、魔法の杖だとか。聞いたこともありませんね」

彼は冷めきった目で私を見ている。

「え? こんな有名な話、貴方は知らないの?」

「有名どころか、聞いたことすらない話ばかりです」

「だって、誰でも知ってる話じゃ……」

そこまで言いかけて私は口を閉ざした。

え? ちょっと待って……。私はどこでこんなファンタジーな話を知ったのだろう? 自分のことに関しての記憶が全く無いはずなのに……。

思わず考え込んで頭を抑えると彼が話しを始めた。

「それでどうするのですか? 先程ユリアお嬢様は公爵様にご挨拶に行かなければと仰っていましたよね。公爵様は今仕事中で執務室におられ
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  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第14話 ここでも悪女扱いですか?

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  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第11話 全く記憶にありません

     私は夢を見ていた——何故か分からないが、私にはこの世界が夢であるということを認識していた。夢の中の私は薄暗い霧が立ち込める森の中を立っていた。そして森の中へ一歩を踏み出す。そこで私の目が覚めた——****「ユリアお嬢様……今朝は随分と眠そうですね?」朝食を食べながら今朝4回目の欠伸をしていると、向かい側の席に座るジョンが声をかけてきた。「ええ……色々考えることがあって、なかなか寝付けなくてね」テーブルパンにマーマレードを塗っているとジョンが首を傾げる。「考え事ですか? 一体何を考えることがあるのです? ひょっとすると悩みでもあるのですか?」「え……?」私はその言葉に驚き、ジョンを見た。彼は美味しそうにオムレツを食べている。「ねぇ、ジョン」「何ですか?」「ひょっとして、私には悩みがないと思っているの?」「はい、勿論そう思っていますが……え? ひょっとするとユリアお嬢様は今悩みをお持ちなのですか?」言い終わるとジョンはベーコンを口に入れた。「あるに決まっているじゃないの。命は狙われているし、記憶は戻らない。家族からはどうやら嫌われているらしいし、何か夢を見た気がするのに全く覚えていない……」するとボソリとジョンが言った。「嫌われているのは家族だけでは無いのに……」「え? 何? 何か言った?」「いえ、何も言ってません」「嘘、今『嫌われているのは家族だけでは無いのに』と言ったじゃないの」「聞こえているなら問い直さないで下さいよ」「あのねぇ……」言いかけたたけれども、ジョンは視線も合わせずに食後の珈琲を飲んでいる。それを見ていると何だか馬鹿馬鹿しくなってきた。「別にいいわ。私が嫌われているかどうは登校すれば分かる話だものね」わざとジョンに聞こえるように言うと、ミルクを飲み干した。そう、今私が一番頭を悩ませているのは嫌われているかどうかよりも記憶を失っていると言うことなのだから——**** ガラガラガラ……走り続ける馬車の中、私はジョンと向かい合わせに座っていた。私もジョンも高校の真っ白い制服を着ている。「ジョン、その制服姿……中々似合っているわね」するとジョンは謙遜することもなく言う。「ええ、私は何を着ても似合いますから」ジョンは馬車から窓の外を眺めつつ、返事をする。「…」確かにジョンは悔しい位にハンサ

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第10話 2日目経過

    「ちょっと! どうして私とジョンの部屋が繋がっているのよ!? それにメイドの姿に扮しなくていいの!?」部屋の壁に取り付けてある扉から私の部屋に侵入してきたジョンに抗議した。ま、まさか私に夜這いを!?するとジョンが白けた目で私を見た。「ユリアお嬢様……ひょっとして私が貴女の部屋に夜這いに来たとでも思っていませんか?」「え、ええ。そうよ……。な、何よ。もしおかしな真似をしようものなら……」「はぁ~…」すると大袈裟な位、ジョンがため息をつく。「勘弁して下さい。私にだって選ぶ権利はあるのですから」「何よ……その選ぶ権利というのは」「つまり、何があってもユリアお嬢様だけは夜這い対象にはなり得ないと言うことです。第一頼まれたとしてもお断りですよ」ジョンは小声で言ったのだろうが、生憎私の耳にはばっちり彼の言葉がきこえていた。……少しだけ女としての自分を馬鹿にされたような気になってくる。「それなら、一体どういうつもりで私の隣の部屋に貴方がいるの? それに何故ノックも無しに勝手も私の部屋に入って来るのよ?」「簡単なことです。今日でユリアお嬢様が命を狙われている事がはっきりしたので、何かあった時にすぐに駆けつけられるように公爵様にお願いして、ユリアお嬢様の隣のお部屋で暮らすことにしたからです。ノックをしないのは単にそのような習慣が私に無かったからです。しかし、確かに仮にユリアお嬢様の着替えの場に入ってしまった場合は余計な物を見させられてしまう可能性があるので今後はノックをすることに致します」ジョンの言葉に苛立ちを感じる私。「ええ、そうね。お互い嫌な思いをしなくてすむように、今後はノックをしてちょうだいね?」「ええ。全くその通りです。それでユリアお嬢様のお部屋に伺ったのは明日のことについて大切なお話があったからです」「大切な話……?」「はい、そうです。明日から私とユリアお嬢様は一緒に登校することになりますが、私達は遠縁の親戚という設定でいきますので、屋敷内と学校内では口調を変えることをご了承願います」「何? 大切な話ってそんなことだったの? 別に全然こちらは構わないわよ。ところで、学校へ行くと言う話だけどジョンも私と同じ18歳だったの?」「いえ、26歳ですけど?」「え? 26歳……?」「はい、そうです」「え……ええ~っ!? あ、貴方……26歳

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第9話 護衛騎士との会話

     翌日は学校を休んでしまった。理由は前日池に落ちてしまったこと、、護衛騎士のジョンの入学手続きを済ませなければならなかったからだ。「ユリアお嬢様。先程私の入学手続きが済んだそうですよ」昼食後、自分の記憶を失った手掛かりを探す為に自室の本棚を漁っていた私の元へ、1枚の書類を手にしたジョンがフラリと現れた。「……相変わらずノックもしないで貴方は部屋に現れるのね。私が着替えでもしていたらどうするのよ」ため息を付きながら、手にしていた本を棚にしまった。「だったら、ユリアお嬢様も少しは警戒心を持ったらいかがですか? 一応貴女は命を狙われているのですよね?ま ぁ、昨日の池ボチャが演技でない限り……」「ちょっと酷いじゃない。あんなドレス姿で池にわざと落ちるはずないでしょう? 貴方がいなければとっくに溺れていたわよ。……そう言えばあの時、どうして貴方があの場に現れたの?」するとジョンはため息をついた。「やれやれ……そこから説明が必要だったとは……。いいですか? 私は今迄メイドに扮してユリアお嬢様のお世話係として護衛していました。昨日は天気がいいので外のテラスで紅茶が飲みたいとおっしゃる我儘なユリアお嬢様の願いを聞き入れ、お茶の準備をして戻ってみれば、お様がフラフラと庭の池に向かって歩いていく後ろ姿を見かけたのです。一体何をしに行くのかと見守っていると、いきなり池に飛び込まれたのですよ。そこで私が慌てて駆けつけた次第なのです」「そうだったの。ところで、私がお茶を飲む前、何か異変は無かった?」「いいえ、特には」「そうなの? だって一ヶ月も私の側で護衛をしていたなら、どこかいつもと違う様子が分かったりするものじゃないの?」だって仮にも私の護衛騎士であるのに。「あいにく、人の心の機微には疎いもので。まぁ……単にユリアお嬢様は私にとって、護衛の対象であるだけで、人間的に一切興味を持つべき対象ではありませんからね」「そ、そう……」どうもこのジョンと言う護衛騎士、顔は恐ろしいほどいいのに性格がかなり歪んでいるように思える。「ねぇ、ジョン」「何でしょう?」「貴方……友達いないでしょう?」「そうですね。でも必要ありませんから」「そう、友達がいないなんて可愛そうね」するとジョンが奇妙な顔つきになる。「何よ?」「いえ……よく、その様な台詞を言えるなと思

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第8話 怪しい日記

    —―カチャ……「!!」自室の扉を開け、思わず悲鳴をあげそうになった。何故なら私の部屋でソファの上で寝転がって本を開いているジョンの姿があったからである。「お帰りなさい、ユリアお嬢様」彼はムクリと起き上がった。「な、何故ここにいるの? 驚くじゃないのよ」抗議の意を込めて頬を膨らませると、ジョンはクックと肩を震わせて笑った。「本当に見れば見る程、別人としか思えませんね。以前の貴女ならそんな可愛らしい行動は取りませんでしたよ? それで実の父親と対面してどうでしたか? 何か思い出せましたか?」「いいえ、何も思い出せなかったわ。それどころか、本当に私の父親なのかと疑いたくなってしまったわ。何しろすごく冷たい人だったのよ? 私が記憶喪失のふりをして関心を引こうとしていると考えていたのよ。それに虚言を吐いて、自分達を困らせるなと釘を刺されてしまったし。私って父親にも嫌われていたのね……」思わずため息をついて、チラリとジョンを見ると彼はまた本に目を落としている。「ねぇ……さっきから何してるの?」「ええ。これはユリアお嬢様のライティングデスクの上に置かれていた日記帳のようでしたよ」「ふ~ん……日記帳……ええっ!? に、日記帳!? やめてよ! 何故勝手に人の日記帳を盗み見るのよ!」すると彼はサラリと言った。「別にいいじゃないですか。ユリアお嬢様は記憶喪失なのですから。日記帳を私に読まれても何とも思わないでしょう?」「それはそうだけど……って違うでしょう! とにかく日記を返してよ!」「別にいいですけどね……たった1行しか書かれていない日記帳なのですから」ジョンの言葉に耳を疑う。「え……? 嘘でしょう?」「嘘なんてついてどうするのです? 本当に1行しか書かれていませんよ。どうぞご自分の目で確かめて下さい」ジョンが私に日記帳を手渡してきた。「そんな、一行だけなんて……」パラリと最初のページをめくってみると、そこには1行だけ書かれていた。『9月9日 残り、後1日』「……」何、この内容……。続きは無いのだろうか? 他のページも試しにパラパラとめくってみる。しかし、やはりどこにも何も書かれていなかった。「ねぇ……今日は何月何日なのかしら……」「そんなことも分らないのですか? 今日は9月10日ですよ?」何処か小馬鹿にしたような言い方をするジョ

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第7話 家族に嫌われている悪女

      18時半―― 美しいシャンデリアに照らされた 広々としたダイニングルーム。テーブルの上には豪華な食事がズラリと並べられていた。私の向かい側に座っているのはこの屋敷の当主であり、父でもあるフィブリゾ・アルフォンス公爵が食事をしている。父の瞳の色は私と同じ紫色だった。それにしても……流石は公爵。見事なテーブルマナーである。「…」私は食事をしながら公爵をじっと見つめていた。……本当にこの人は私の父なのだろうか? 自分の父を見れば記憶が蘇るだろうと思ったが、あいにくそんなことは全く無かった。それどころか、父親とも思えない。こうして面と向かい合わせに座っていても違和感しか感じない。すると、私の視線に気付いたのか、父は顔を合わせることもなく尋ねてきた。「池に落ちて溺れかけて、さらには記憶を失ったそうだな」「!」あまりにもそっけない物言いに、思わず食事をする手が止まる。何て無関心な物言いをする人なのだろう? 父は私の行動を気にすることもな聞く話を続ける。「それでどうなのだ? 少しは記憶が戻ったのか?」「い、いえ……」すると父はため息をついた。「全く……命を狙われているから護衛騎士を雇ってくれと言われて雇ってみれば、自分から池に飛び込んで今度は記憶喪失になったとは……」そして私をジロリと見る。「そんなに私の関心を引きたいのか?」「え?」一体何を……?「お前には十分な金を与え、何でも好きにさせてきた。王子の婚約者になりたいと訴えるから、王家に恩を売ってお前を王子の婚約者にもさせてやった。だが、私に出来るのはそこまでだ。王子に嫌われているのはお前自身に問題があるからだろう? いくら人々の気を引きたいからと言って、命を狙われているだとか、記憶喪失になった等と虚言を吐いて周囲を困らせるのはやめるんだ。そんなことをしても誰もお前に関心を持たないぞ。逆に疎まれたりするだけだ。これ以上妙な行動を取って、この家の名を汚すのはやめるんだ。私やお前の兄たちに迷惑をかけるのはやめろ。亡くなったお前の母はそれは気立ての良い女性だった。何故お前はその様に振る舞えないのだ?」「……」父であるはずの公爵の話を私は半分呆れた様子で聞いていた。ユリアとして生きていた記憶は全く無いが、一つ分かったことがある。記憶を失う前の私は父親と、まだ会ったこともない兄達から嫌われている

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